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日々感じたこと、思ったことを風化させないように、、、忘れっぽいので。
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抜粋①『僅かな燭台の灯で照らされた広間の暗さは、小座敷の暗さと濃さが違う。
(…中略…)
諸君はこう云う「灯に照らされた闇」の色を見たことがあるか。それは夜道の闇などとは何処か違った物質であって、たとえば一と粒一と粒が虹色のかがやきを持った、細かい灰に似た微粒子が充満しているもののように見えた。私はそれが眼の中へ這り込みはしないかと思って、覚えず瞼をしばだたいた。』

抜粋②『屋内の「眼に見える闇」は、何かチラチラとかげろうものがあるような気がして、幻覚を起こし易いので、或る場合には屋外の闇よりも凄味がある。
魑魅とか妖怪変化とかと跳躍するのはけだしこう云う闇であろうが、その中に深い帳を垂れ、屏風や襖を幾重にも囲って住んでいた女と云うのも、やはりその魑魅の眷属ではなかったか。』

抜粋③『われらの祖先の天才は、虚無の空間を任意に遮蔽して自ずから生ずる陰翳の世界に、いかなる壁画や装飾にも優る幽玄味を持たせたのである。』

抜粋④『然るに進取的な西洋人は、常により良き状態を願ってやまない。蝋燭からランプに、ランプから瓦斯燈に、瓦斯燈から電燈にと、絶えず明るさを求めて行き、僅かな陰をも払い除けようと苦心をする。』

まるで埴谷雄高氏の死霊を思わせる抜粋①の広間の「闇」は、悠久なるモノ特有の不気味な光彩を放っているが、抜粋②を読みに及び、それは魑魅魍魎の眷属を幻視しかねない程に狂気じみた畏怖を与えんとするものであると述べられている。

抜粋③のように、日本人は衣・食・住のあらゆる生活面に「闇」を見出し、闇の中に悠久なる「幽玄美」を見出したが、幽玄美は当然のこととして現世を生きる我々に「死」を薄らと予感させるものである。

漆器や大仏殿の装飾は幽玄美であるが、抜粋①②は美とは呼べず、この違いは何故かというと、やはり実在するモノと陰翳が巧く調和していないからであろう。

無限の時を内包するかの如き陰翳は、現世のモノを映え立たせ、そこに陰翳美が宿る。よってこの種の美における、陰翳の優位性は否定できない。
ところが、陰翳が極度に充満した空間では、幽玄美となりえた可能性=調和の可能性が棄却され、実在のモノに対する闇の逼迫、という構図が成り立つ。ゆえに我々はこれに戦慄を覚えるのである。
しかしながら、この広間の例のように、モノと陰翳の関係が弱々しくも成立する以上、これはこれで美の亜種には違いなく、「戦慄美」というのはこれのことを云うのではあるまいか。

完全な闇、というものも確かに恐ろしいものだが、それはまず第一に身じろぎ一つできぬ状況に対する恐れであるとともに、外の世界と自己との関連がプッツリと途絶された事への恐れである。
錯乱した精神が連想する死や魑魅の観念は、直接、自己それ自体を押しつぶすのであって、哲学的な意味は見出し得るが、ここに美的な要素は介在しない。

古人により発展し尽くされた幽玄美は、日本の美と言い換えても差し支えなく、日本美の特徴を言い表す語句としての「もののあわれ」、や、「わびさび」が、或る種、生への諦観を連想させるのも頷ける。文化の大多数は、不安や恐れを誤魔化すための稀有壮大な代替行為であるという説もあるくらいだ。

─抜粋④であるが、たしかに西洋の生活では陰翳を遠ざけようとする兆候があると思われるし、生活がその土地の美に直結するのも既に述べた通りである。

しかし、美とは不思議なもので、その土地の衣・食・住に馴染めない文化でさえ、そこから発展した美術品の品々については、我々は確かに美しいと感じるのである。もっと云えば、極めて前衛的な画家や工芸家の作品のように、まったく土地柄を感じさせない美の領域が現に成り立っている。
このように考えると、陰翳に対する日本人の態度決定が西洋人に理解されないにしろ、陰翳美までが全く理解されないように思うのは実は誤りなのである。

現実的なモノへの好悪の感情、評価を度外視し、そのモノから形取られた美は、遠く隔たった地においても独自に成立してしまう。文明の営みから生まれた美は、もはや、そのモノへの遡行を拒む程に即自的な強さを秘めているのである。

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